NHKで放送されているシリーズ企画番組、「未来への教室」をご存知の方はたくさんいらっしゃるのではないでしょうか。21世紀を担う子供達に現代の偉人達が特別授業を行い、そこから得た知恵や夢を持って、明るい未来を創ってもらいたいという願いが込められた番組です。先日、指揮者、チョン・ミョンフン氏による
東京の公立小学校に通うオーケストラクラブの子供達に、ベートーベンの交響曲第5番「運命」を演奏する授 業がありました。3回の授業という限られた期間に見せたそこでの子供達の成長振りには、本当に感動させら
れ、涙があふれました。これは、チョン・ミョンフン氏の視線が子供達と対等なもので、音楽を奏でることを 通して、「学ぶ」ということの根本を教えたからだと感じました。授業は、絵を書いたり、散歩をしたり、生
徒それぞれが曲の背景をイメージし、「なぜ」速く、強く、ゆっくり弾くのかを解釈し、「どのように」速く、 強く、ゆっくり弾くのかを自分達で考えて演奏するというものです。実際に東京フィルのリハーサルを見学し、
更には「料理の道は音楽に通ず」と、子供達に音楽だけの話ではなく、料理を作りながら解説するというバラ ンス感覚を持った授業でした。
この番組を見て、英国で学んでいた頃の課題のひとつを思い出しました。年間を通し、自分が美しいと思った
庭の写真と美しくないと思った庭の写真を集め続け、それぞれに対しそう思った背景、構成を細かく研究し、
更に自分だったらどうするかという提案も加えるというものでした。これを何回も繰り返し続けるのです。一
見簡単に思える課題ですが、日頃の生活の上で、理由や背景を考えず、単にきれい、好き、嫌いだけで表面的
に通り過ぎてきていることの多さを痛感させられ、苦労したことを覚えています。また、自分の提案を加えな
ければならないという点においては、こういった美しさの解釈ができて初めて自分のオリジナルの提案ができ
るということにも気がつきました。
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